人気ブログランキング | 話題のタグを見る
連歌の終わり

囁き声が帰ってきた。







「ほら、だめだったろう」







なんだ、ずいぶん嬉しそうだね。







「また、だめだったなあ」







笑ってるのかい。







「いつもだよ、いつも笑っているよ」







そう。








「これからも、ずっとさ」







ずっと?






「一生だ」






無駄なことをするね。









「無駄じゃないさ。お前はずっと俺の声を聞くんだ」







残念でした。僕にゃそんな声は届かない。







「なんでだ」







あんたが囁き続けてくれたおかげさ。







「そんなことがあるかよ」







あんたはこれからも囁き続けりゃいい。

あんたでさえ、僕にとっちゃ味方だ。

あんたがいなきゃ、僕はこうして立ってりゃしなかった。

だからあんたは囁き続けなきゃいけない。

ずっとだ。

これからも。

僕のために。








「嘘だ」







嘘なものかよ。

僕のゴングはあんたなんだから。

お前が僕のゴングなんだ。

お前がゴングだったんだよ。

だから囁き続けろ。

喉が潰れてもだ。

血を吐いてでも、これからもずっと叫ぶんだ。










「お前は道化だ」










道化なんか、いやしないんだよ。

皆ね、精一杯やれることをやるんだよ。










「彼女はお前を侮蔑してる」









ひとつ教えてあげる。

人の誇りを傷つけられるのは、その人だけ。

他人ができるのは、ただ侮辱だけ。

いいかい、人はね、

どんなに罵られたって、揺るがない気持ちを持つことがあるんだよ。

だた傷つくだけ。

こころの一部が深く傷つくだけ。







「お前が彼女の家の前で待っている時、悲鳴がしたな」






したね。





「女の悲鳴だ。そう遠くじゃあ、なかった」





ああ。






「でもお前は行かなかった。反射的に走りかけて立ち止まり、ドアの開くのを待ってた」





ああ、そうだよ。





「あの悲鳴の女性は、助けてって叫んでいた」





ああ。






「お前は、そんな自分も許せるのか」




いいや。許せないよ。

僕は一生自分を軽蔑する。

悲鳴を聞いても、その場を離れるのが怖くて、助けに行かなかった。

その場に留まるのを選んだ。




「お前はそういう奴なんだよ」





そうだね。





「死んじまえよ」





投げ出すの?

つらいからって?

僕があの時、走れなった事実をもみ消すために?

そうじゃない。

そんなのは、人の選択じゃない。





「死んじまえ」






それはね、僕が決めること。

走れなった自分も、僕は背負って生きていくのを選ぶ。





「もう、お前の戯言は聞き飽きたよ。」

「お前なんか、誰もいらねえんだよ」





君は間違ってる。

人は必要とされてるから生きてるんじゃない。

必要とされる人間になるために生きるんだ。

無能でも、無力でも、誰にも必要とされていなくても、

人はそうでならなくなるために、生きるんだ。





「お前は、あの町に、行かなくてもよかった」





そうじゃない。

行ってよかったんだよ。

行かなきゃならなかった。

行かないなんて選択はないんだよ。

SOSのサインを聞いて、動かないでいられるわけが、ないじゃないか。

彼女が地球の反対側にいたとしても、僕は行った。







「でもお前は、悲鳴の女性を無視したぜ」






それは僕が抱えて行けばいい。

引きずって行けばいい。

走り出して立ち止まっちゃった自分も、僕はもう見捨てない。

どんな情けない自分も、弱い自分も、二度と犠牲にしたりしない。

そうやって足を引きずってでも、歩いて行くよ。







「お前はポンコツだよ。マトモじゃない」








そうだね。





「お前は彼女の言葉が信じられない」




ああ。





「2年前、彼女の嘘を見抜けずに、追いきれなかった後悔が、お前だ」




そうだよ。

僕は壊れてる。

ずっと昔に壊れたまま。

今でも、何度も繰り返し言われても、

彼女の「愛していない」って言葉を、脳のどこかがずっと強く否定してる。

=騙されるな。また嘘かもしれないぞ。=

=お前はまたそうやって、彼女の思いやりに甘えて、一人で呑気に生きるのか=って。

脳のどこかが叫んでる。




「お前は壊れちゃったんだよ。もう2度と立ち上がれない」




僕は、確かに彼女の言葉をそのまま丸ごと信じられない。

だから本当は、とっくの昔に彼女を愛することなんか、できやしなかった。

最後のつもりで綴った歌の答えを彼女が書いて、初めてそれに気がついたよ。




「じゃあ、今は信じたの?彼女の言葉を」





信じられれば、シンプルだね。

僕は惨めな気持ちに浸れる。

可愛そうな人って自分を慰めてあげれる。

ずっと単純だよ。

でも今も脳の一部が叫んでる。

=彼女は嘘をついてるぞ=って。





「お前は廃人だよ」







それでも生きて行くのを選べる。









「お前が唯一救いにしている、玄関の明かりは、彼女じゃなかった」






1時までの間に

玄関の明かりが一度ついて、消えたよ。

その少しあとに、階段を駆け上がる彼女の姿が見えた。

彼女は最後まで揺れていたよ。




「あれは彼女がやったんじゃない。彼女は車の中にいた」




どうなんだろうね。

でもね、それでも僕の脳の一部は、それでも

=彼女の嘘に気づけ=って叫んでる。




「お前は自分が信じたいものだけを見ているだけだ。壊れちまってるんだよ」




そうかもしれない。

彼女がね、愛していないって書くたびに、

心の真ん中にハサミを突き立てられてるみたいに、悲しくなるから。

大事なものを踏み潰されてる感じがする。

確かに僕は、自分が見たいものだけを見ようとしているのかもしれない。





「お前はピエロだ」






僕は、全部を信じるよ。

彼女の記事も、自分の脳の叫びも。

何が本当なのか、わからないまま、生きようと思う。

なにも確信をもてないまま、生きて行くよ。

まっすぐに、なにもわからないまま、生きていく。

彼女と離れて生きていく。





「また、逃げるんだな。」





僕は、彼女を愛する資格がない。

大事な部分が壊れてるから。

もうね、彼女の言葉を信じてあげられないんだ。

自分の脳の叫びも信じてるから。





「終わってるぜお前。まるで警官みたいだよ」






そうだね、もう僕には、ちゃんと彼女を愛せる可能性はゼロだよ。








「彼女にゃ、煙草にお前が込めた祈りも届かなかった」





ここに、君を愛している人間がいたよって、伝えたかったんだ。





「ひとりよがりな発想だね」





でもね、半分は通じた。





「彼女は嫌悪してるって暗に書いてる。それも信じないの。イカレてるぜお前」




彼女は書いてる。

あれは愛の行動だって。

僕が伝えたかったのは、彼女を愛している人間がいるってことだった。

徒労じゃなかったんだよ。




「どうしても認めないつもりなんだな」






僕は、全部を認めて、信じて、疑う。

ぐちゃぐちゃのまま、わけがわからないまま、生きることを選ぶ。

今度だけは、無理やり結論を出しちゃいけない気がするんだ。

僕はいつもそうやって不安や動揺を避けてきた。

結論をひねりだして、楽に歩けるよう、地盤を固めて立って歩いてきた。




もう、そんなことはしたくないんだ。

ちゃんと、泥濘のなかで、自分の力で立ちたいんだ。

僕はもう、どんな自分も見捨てない。

邪魔でも足手まといでも、背中に担いで生きるんだ。






「わけわかんねえよ。お前の言ってることは」





僕には必要なことなんだよ。

今までずっと、地固めして歩いてきた。

そろそろちゃんと、道なき道を歩かなきゃ。

じゃないと前に進めない。




「彼女ってお前にとってなんなの?」





心から愛したかった人だよ。

僕の心を翻弄する、ただ一人の人。

目の前に現れては、寸前で身を翻して去って行く女性。

彼女は、意図することなく頑固な僕を別人に変えて、

それが終わると必ず姿をくらます。




「今も好きなのかい。お前は玩具みたいにされたんだぜ」




人にはそう見えるかもしれないね。



彼女が僕の前に姿を現し、自分のピンチを伝え、僕が気づき、

彼女に行くことを告げて、彼女はそれを了解して、

僕が彼女の家に向かってから、

自分が僕を受け入れないことが書かれた記事を乗せ、

僕は知らずに彼女を待ち、

終わりの歌を歌い、

彼女は僕を侮蔑した。

人にはね、僕が玩具にされたように見えるかもしれない。




でもね、それは違う。

僕は彼女にもう一度出会う必要があった。

彼女は僕を断ち切る必要があった。

叫び続ける脳の声を押しつぶすと、それが本当なんだと思う。



僕は、2年前、できなかったことをしなきゃならなかった。

彼女は、僕を断ち切らなきゃいけなかった。




だから、彼女は僕に近づいて、

僕は彼女と向き合うために、自分の弱さと向き合って、彼女のところにいった。

好きだったからね。

でも、彼女には、僕を断ち切らなきゃいけない理由があった。



この出会いに価値はあったんだよ。

僕は弱さを認め、彼女は弱さを断ち切った。







それだけは、僕は確信をもっていえるよ。

この出会いに価値はあった。







「苦しくないのかよ」





苦しいよ。

飯が長いこと喉を通らない。

当たり前さ。ぐちゃぐちゃなんだもの。

でもね、僕は覚悟してた。

どんなに傷ついてもいいって。

それにね、僕の馬鹿で彼女に愛想をつかされるのは、これで2度目だから。

呼ばれて行って切られるのも2度目。

傷つく覚悟も、どんな風に扱われてもいいって覚悟があった。

彼女には、僕がそうするに足る資質があった。

だからね、印象ほどダメージはないんだよ。

存外僕はタフだから、

全部を覚悟して、僕は家を出たから。






「・・・・・・」





なんかお前、優しくなったね。

昨日は1晩中、僕をいじめてたのに。

いつも意地悪なことばかり言うのに。

ゴングを鳴らせよ。

立ち上がってやるから。











僕は、わけがわからないまま、道なき道を歩くことを選びます。

どんな自分も見捨てずに、背負って生きていきます。

壊れた自分も、走れなかった自分も、傷ついた自分も、全部を背負って歩きます。

膝まで埋まる泥の海を、皆に支えられながら、泳いで行きます。

これが僕の選択です。













彼女は切ないラブソングが好きでした。

切なさと愛の中で、幸せを叫ぶのが彼女の生き方なんだと僕は思っています。





でもね、僕にはラブソングは似合わない。

好きだけどね。

どうにも合わないよ。

つくづく、ロックなんです。

人生の全部が、ずっとロックでした。

これからもそれは変わらないでしょう。




ロックにもいろいろあってね、

僕は、彼女がもう一度現れるまで、

クイーンのショウ・マスト・ゴー・オンが、自分の歌だと思ってました。

それは演じ続ける人間の歌です。

でもね、どうやら僕は違うっぽい。



僕は自分で考えていたより、ずっと幸せになれるんだと思う。

たくさん傷つかなきゃ、越えていけない山や谷が多いけど、旅の甲斐のある道です。

山や谷を越えるたび、違う景色が広がります。

だから僕は自分の人生が好きです。

いつだって、衝動的で失敗ばかりだけど、やっぱり好きです。


連歌はこれで終わりです。

みんな、支えてくれてありがとう。

見守ってくれた人々に、僕の想いが届くようにと、励ましてくれた人々に。

これでしばらく「僕」とはお別れ。

今度はまた、元気爆発の「小生」が帰ってきます。

「僕」に合いたくなったなら、KISSのラヴ・ガンをどうぞ。

和魂要塞の、愛の歌である連歌にふさわしい激しく無茶な曲です。











現実世界の僕と、電脳世界の僕の両方を、昔から知っている友人がいます。

チャット仲間で、付き合いは結構古くて4年くらいになるのでしょうか。

二人は、ついこないだも、僕の引越しを手伝ってくれました。

そのうちの1人の女性と、僕は関係を持っていて、

2年前に失ったものを取り返すと決めたあと、

その女性にもう合えないことを伝えました。




二人はあまりこのブログに姿を見せませんが、ちょくちょく来てくれています。

二人から、昨夜、電話がありました。

「大丈夫?」って。



ぶっちゃけると、僕は、電脳世界と現実世界の顔がまるでいっしょです。

こっちでもあっちでも、そのまま和魂要塞してます。

だから彼ら二人にとっては、僕が連歌を始めたことは、大きな衝撃でした。

彼は、早口に言いました。

「あんたが、180度変わっちまったみたいだ」

僕の存外明るい声を聞いて、面喰らってましたね。

大丈夫、僕はシグの知っている、異常にタフな「 どりる 」のままだよ。




僕は、ちょっと前まで、「小生」でした。

そこには「僕」がいなかった。

今は、これまでずっと犠牲にしてきた双子の弟と、二人三脚で歩いてます。

ぶっちゃけ、強さは2倍です。

今ならサメにだって勝てます。

だからどうか心配しないで。





さちへ。

僕は君を置いて、自分勝手に突っ走りました。

僕は、すべてにおいて馬鹿です。




君の言葉は忘れません。




「あなたが昔の女に走るのはかまわないけど、連絡はとってよ。」

「あたしは、あなたって飲み友達を失うほうが嫌なのよ。」




僕は、いつだって馬鹿です。






・・・・珍念は一切連絡をとってきやがらないのでなんともいえませんが、







ZIL、毎度毎度心配かけるね、お前は一番やばいとき、必ず助けに来てくれるね。

お前は俺が読んでないのにどっかで見ていて必ず助けに来てくれる。

15歳の時から、お前はヤバイのが分かってても俺のそばにいてくれた。

俺はね、お前に頭があがんねえんだ。

立派過ぎて。

男だなぁって、つくづく思うよ。

お前みたいな人間になれりゃあなってさ、実は何回も思ってきた。

でも俺は果てしなく馬鹿だから、いっつもふらふらしてんの。

ありがと。







ウナギA、ほとんど毎日あってるけど、やっぱね、文字に残しておくよ。

お前が真横で支えてくれて、俺は初めてマトモにいろいろ考えらたんだ。

さんきゅ。







顔も知らない友人たち、

癖まで知ってる友人たち、

みんな、友達でいてね。





小生、馬鹿だけど、これからも、まっすぐまっすぐ頑張るから。
by 201V1 | 2004-06-17 12:24
<< えー 行進 >>