理解者


自分の抱えるものを、汲まれた時、人間て奴は、泣くのだ。

はらり。

はらりと。





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自分は、能がねえ。

2度とクソみたいな思いをしたくなくて、

誰にもクソみたいな思いをしてほしくなくて、

なんとかしたくて、

足掻いて、

でも上手くいかず、

その度に道に迷い、

何度もわけがわからなくなりながら、

歯軋りしながら、

悔し泣きしながら、

手探りで探して、

失敗して、

失敗して、

失敗して、

今日まで来ている。







賢くなりたかった。

強くなりたかった。

なんとかしたかった。

悔しかった。

悔しくて、

悔しくて、

しょうがなかった。

何度も泣いた。

くやしくて。

自分の非力と無力が歯痒かった。






力が欲しかった。

いつも手からこぼれてく。

誰かがボロボロにされちまう世の中が憎かった。

それを見ながら、いつもなにもできねえ自分が許せなかった。

いつも無力だ。

何もできねえ。

何もできやしなかった。

クソみたいな世界に歯がたたねえ。

無力な自分が許せなかった。

誰より自分を殺したかった。






力が欲しい。

クソみたいな世界に、対抗する力が。

その為に、全部を使おうと思った。

命なんざ、くれてやると、思った。







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最初は抵抗じゃあなく、殉教だった。

ずっと昔。

まだ10代の頃だ。

10年以上前になる。

最初の敵は、ちっぽけな暴虐とデッケエ欺瞞とカスみたいな権力だった。

戦いながら散々世界を呪った挙句、

微塵も他人を信頼できないようになっているのに、

自分なら世界を塗り替えられると信じて、日本を出た。

殉教者の挑戦である。

完全に塗り替える為に力をつけようと、

憎悪と怨嗟を身にまとい、濁った瞳で海を渡った。





2年間の放浪は、全部を奪ってくれた。

打ちのめされて帰国して、それから丸4年間。

何ひとつ確かなものを見つけられないまま、

会話するのは家族だけって暮らしをやった。

友人に会うのは年に3回くらい。

1500日、ひたすら考え続けてた。

答えが知りたかった。

人がどこから来て、なんで世界はクソで、自分はどこにむかうべきかを。






掴んで上京したはずだった。

確信を持って山を降りたはずだった。

けれども自分はどこまでも果てしなく無力だった。

非力な、ただのガキだった。

無力だった。










「 無念 」って、気持ちを生身で知った。






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小生のスタートは、15歳である。

全部はここから始まっている。

18歳の時、付き合った女性は、この意味が理解できなかった。

伝えるだけの整理が、小生についていなかったのが大きな原因だろう。

フラッシュバックのように高校時代の出来事に立ち返り、

その度に呪いの言葉を吐く小生を、

彼女は優しく包んでくれた。

そして、

「 大丈夫よ。高校生の思い出なんて時間が経てば過去のことになるわ 」

と言い聞かせてくれた。

でもダメだった。

抉られた信頼と、憎しみと怒りは消えなかった。








洗礼から一回り。

もう12年が経とうとしている。

虚無と向き合い続けた12年だった。






小生が、「 特殊 」なのは、

15歳からこっち、自ら望んで虚無と対峙してきたからだ。

おそらく自分より幸福感に満ちた幼年期を送った人間は殆どいない。

6人の大人に溺愛され、犬にまで実の子みたいに愛された自分は、

一寸の不安も知らずに少年期に入る。

12年前の春、安全だった世界がひっくり返った。

悪意が襲ってきた。

純粋な悪意だった。







「 怒り 」






「 私憤 」しか知らなかった自分が「 義憤 」という感情を知った事件だった。

汚泥のような世界が、当たり前のように支持される現実を知った。

世界の中のヘドロの様な現実が、自分の中の真実に、殉じる覚悟を決めさせた。





「 刺し違えてでもブチ抜く 」って生き方が始まる。




それは、世界への離縁状であり、自身の真実に殉じるという、完全な自己完結だった。

「 世界がどうあろうが、俺は俺のまま生きて死ぬ 」

これは人間の完成した姿の1つである。

よくも悪くも完全な自己同一性を15歳にして小生は獲得した。

命より大事なものを見つけたのである。

死人だった。

15歳の自分を形容するとき、他の形容詞はいらない。

ただ「 死人 」の二文字があればいい。






自分だけの教義の為に命を捨てるテロリストが自分だった。

小生は、同世代の誰よりも、テロの心情を理解できる。

自身がテロリストだったからだ。

手段を選ばず、敵対するものの尽くを葬った。

気に入らないものの全てを叩き潰した。






「 汚い手段には、ド汚い手段を持って報いる 」

「 弱い奴は死ね 」





当時の小生が服従した思想がこれだった。

「 正義 」の2文字の前では、全てが無条件に肯定された。

悪夢のようなガキだった。

死を覚悟すれば、打破できないものなどこの世界にはないことを知った。

死ぬに値する輝く「 信念 」が自分にはあった。






これが脆くも崩れ去ったのが暗黒のアフリカだ。

信念が崩れたのは、

小生が文化進化論者ではなく、文化比較論を信奉していた点にあった。

異文化に触れる際、この両論のどちらに組するかは、大きな結果の相違を生む。

前者であるならば、他の文化の価値観を「 野蛮 」と断じることができる。

後者はそれができない。

ならばどうなるか?

自国と他国の価値観の大幅なズレに対して、

比較論者は価値観の相対化を行なうしかなくなるのだ。

そうすれば、信念は絶対的なものとして、脳内で君臨できなくなる。

それは小生にとって、自己同一性を根底から揺るがす大事件だった。

2年間の放浪で、小生は抜け殻みたいになって20歳で母国に帰る。

体も心もズタボロになりながら。







その後の4年間の隠遁で、

小生は散々に苦しんだ末、「 全ての人間は東へ向かう 」という確かな真実を知り、

東京の2年で、暮らしの中で不確かな真実を掴んだ。







高校の3年間は、

「 疑いようのない生き方 」を知るためだった。



放浪の2年間は、

「 なにもわからない状態 」に向かうための時間だった。



20歳を過ぎてからの隠遁の4年と無為の2年は

「 なにもわからいトコロ 」にいることを自覚するための6年だったように思う。







「 怒り 」だけが、実質的な糧だった。






何故かと思う。

何故かと、問う。

「 怒り 」だけで、人がここまで食い下がれるのか?

多くのことをかなぐり捨てて、どうしてこんな馬鹿を続けるのか?





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自分の原風景はなんだろうと考える。

根っこにあるのは、幼年期だろうか?

自分はあの平穏を取り戻す為に、馬鹿をやり続けているんだろうか?

あの当時、自分にとっての世界は、「 家の中 」だった。

今、自分の世界は「 この惑星 」に変わっている。


まじかよ?と思う。

どうやらこの馬鹿は、あの天国みたいな幼年期を、この星の上に再現するつもりらしい。

万人の為に。

この期に及んでである。

26歳である。

自分に問う。

「 正気かね? 」

「 本気が原因で、やおら死ぬ奴はいないぜ? 」

「 そうだね 」

「 それとも何だ?永久に生きるつもりかね? 」

どうやらマジである。

この馬鹿は、まるで子供のまんまなのだ。

もういい大人なのに。

漫画で世界が変えられると信じている。

馬鹿だ。

真性の馬鹿である。







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人の「 生き方 」を決定するのはなんだろうか?

この馬鹿はなぜ始まったのか?

「 流れ 」だろうか?

「 出来事 」だろうか?

どうも違う気がする。

小生は、元は単なる極楽なガキだったはずだ。

いつから歯車が変わったのか?

「 義憤 」はどこから来たのだろう?





12年前、全てが始まる時、

チンピラに前後を挟まれたあの日、

恐怖を跳ね返して

「 やりゃあいいじゃねえか 」って啖呵を切らせたのは、

何だったか?

あの選択をさせたのは何か?




この12年間、

いつも誰かの背中を追っていた。

それは一体誰だったのか?







小生は知っている。

それは

2人の架空のヒーローだった。

恐怖や損得感情を凌駕する「 義憤 」と「 友愛 」の苗床となったのは、

彼らによってもたらされた「 人間のモデル 」だ。





1人の名を、ジョナサン・ジョースター 。

もう1人の名を、蒼月 潮 という。






親父やお袋が示すことのできない「 生き方の見本 」って奴を、

この2人が小生に教えた。

彼らがいなかったら、自分の人生は全く違うものになっている。

全くだ。

まるで違う人生っだった。

漫画のヒーローが、人間の人生をまるごと変えた。

まるごとである。

この2人が、小生の人生を出鱈目にしたのだ。

だからこそ、この馬鹿は26歳にもなって確信している。

漫画で人間の人生が変わるって与太を。

信じ続けている。

漫画には、クソ世界を打開する力をガキに与える能力があると。





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ジョナサンが「 誇り 」ってのを教えてくれた。

潮が 「 生き方 」ってのを見せてくれた。

迷いはなかった。



進んでこれたのは、二人の御蔭だ。



かつて3年一緒にいた人が、

「 うしおととら 」を読み、

蒼月 潮 と小生を重ねて語ったことがある。

「 潮って、昭平ちゃんそのまんまね 」。



小生はきっと、あの瞬間を一生忘れない。

一生忘れられないと思う。



しかしながら、現実の小生は、やはりどこまでも無力だった。

矮小で非力な自分しか、いなかった。



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「 クソ世界との喧嘩に勝ちたい 」

12年間。

いろんなカタチに姿を変えながら、この気持ちだけが鮮やかだった。

誰にも泣いてほしくなかった。

全部自分の所為だと感じていた。

自分が非力だからだと、呪った。

強くなりたかった。

ジョナサンのように、

潮のように、

彼らに様な世界に対抗する意思と力が欲しかった。

そのためなら死んだってよかった。

人間から笑顔を奪い続ける世界が憎かった。

虚無が常に隣にいた。



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小生は、漫画家になりたいワケではない。

漫画に賭けているだけである。

物語で世界を救いたいだけだ。

救えるなら、死んだっていい。

この喧嘩に勝てるなら、命なんざいくらでもくれてやる。

世界を、なんとかしたいんだ。

だれかが、しょんぼりする必要なんて、この世界にゃないはずだ。

ないはずなんだ。

神様、ないって言ってくれ。







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小生は、漫画家志望としても、クリエイターとしても、

おそらく極めて異端の部類に入る。

描く事が「 手段 」だからだ。

完全に自己表現を放棄して創作している。

ぶっちゃければ、自分どうこうなんてもう、どうだっていいんである。

全部を捧げる覚悟がある。

人生をまるごと捧げてやる。

ひとりの人間が命懸けで何かに賭ければ、必ず世界は変わる。

誰かの涙を必ず止める力になる。






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クソ世界がむかつく。

人間から、無条件の幸せを奪い取るもの全てが憎い。

そんな道理があっていいはずがないんだ。

誰もだ。

誰もがだ。

誰もが幸せになるために生まれてくるんだ。

なのにそうじゃない。

世界はクソで、暴虐の嵐が渦巻いてる。

くそったれ。

なんとかするさ。

なんとかするから。

俺がなんとかするから、もうちょっとだけ耐えてくれ。




嫌なニュースばかりが流れる。

悔しくて泣けてくる。

どんなに望んでも、クソ世界は滅茶苦茶なまんまだ。

なんでこんななんだ。

どうして俺にゃあ何もできねえんだ。

力が欲しい。

力が欲しいよ。

なにも奪わないでやってくれ。

だれからも、なにも奪わないでやってくれ。



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抑えきれなくなって、泣く夜がある。

どうしてかと思う。

どうして幸せが均等じゃないのかと思う。

怒りと涙でぐちゃぐちゃになる。

喧嘩に勝ちたい。

誰か。

誰か。



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賢くならなきゃと思う。

強くならなきゃと思う。

いつも思っている。



無力も非力も許せない。

なにをやってるんだと思う。

止めたい。

クソ世界の因果律を。

虚無を。

連鎖を。



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俺は、この喧嘩に勝ちたい。




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「 考える和魂要塞 」へのトラックバックを読んで、泣いた。

涙が、止まらなかった。

泣きながら、書いた。





乱文もいいとこだ。

構成も無茶苦茶である。

出鱈目もいいとこだ。

けれども吐き出さずにはいられなかった。

書かずにはいられなかった。

どうして自分が漫画を描くのかを。





全てを汲まれたことに、涙した。





自分が如何に馬鹿かは死ぬほど知悉している。

分不相応な望みのお蔭で、何度も狂いかけているからだ。

多重人格の一歩手前まで分裂が続いて、記憶がぐちゃぐちゃになったこともあった。

頭で考えた言葉が出なくなったときもあった。

完全に医者の助けが必要なときも、そこを乗り越えねばダメだと思い、

嘔吐しながら机にへばりついた時期がある。

脳神経が千切れる音を一晩中聴き続けた夜がある。




全部自分で勝手に選んだ選択である。

全部が全部、覚悟の上での喧嘩だったはずだった。

小生自身が選んだ人生である。

誰の所為でもない。

小生自身が望み、選んだ道だった。







しかし、汲まれた。








涙が止まらなくなった。

汲まれると言うことが、どれほど大きな「 救い 」を人にもたらすか、

今日、始めて知った。






小生は、この喧嘩を続ける。

漫画のもつ、わずかな希望に全てを賭けて。

もてるもの全てを投じて描く。




小生は、ちっぽけな人間だ。

なにもわかっちゃいないし、これからもずっと馬鹿のまんまだろう。

大体漫画でどうにかなるのなんざガキの人生だけだ。




だがね、笑わない人がいる。




汲んでくれる人がいる。

支えてくれる人がいる。

受け取ってくれる人がいる。




俺のくだらねえ、一人相撲を、ド真ん中で受けてくれる人がいる。




「 勝てないかもしれない 」

なんてのは、なしだ。




「 絶対に勝つ 」んである。




小生は、この喧嘩に勝つ。

なにがなんでも、勝ってみせる。

首をもがれても描く。

描ききる。






今日、和魂要塞は、文言を越えて読まれ、魂は汲まれた。











貴兄のくれた力を、小生は明日の糧にする。

ペン一本に命をかけて、

漫画を描く。




貴兄の存在を、神に感謝する。

どんな神だっていい。

小生は、どんな神にだって感謝する。




弩呉羽殿。救いをありがとう。
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by 201V1 | 2004-09-05 06:22 | カテゴライズ前・生ログ
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