万人に勧めうる書を、小生は殆ど知らない。
相当な量の上質の小説を読み倒しては来ているが、
「 運命 」を感じた作品は滅多にねえ。
滅多にないが確かにこの世にはある。
手前のスピリットをそのまま投影したような作品との運命の出会いが。
その稀有な作品のひとつが、
米国の俊英・デニス・レヘインによる探偵小説である。
探偵小説と聴いて、シャーローック・ホームズを連想したアナタ。
多摩川で顔を洗って来なさい。
なんなら三途の川でもいい。
この世界に、読まずに死んだら大損な小説があるならば、
その中には間違いなく、レヘインの探偵小説がある。
天地神明に誓って断言しよう。
この本の存在を知ってなお、読まない奴はどーかしている。
小生は、この本に出会い、感じた。
「 これこそが人間の紡ぐ物語だ 」と。
この本に、一切の説明は不要であろう。
小生は、この小説の骨子を語る如何なる言葉も持っていない。
自己の表現力を遥かに超える世界観が、この小説に秘められているからだ。
デニス・レヘイン、20世紀最後の彗星の呼び声高き若き俊英。
彼は100年後、間違いなく21世紀を代表する作家の1人になるだろう。
読み手は思い知るだろう。
人間がどんな存在か。
彼の作品には、この世の全てが詰まっている。
和魂要塞なんか、読んでる場合じゃないんだぜ。
デニス・レヘイン著。
探偵パトリックと相棒アンジーの、世界との戦い。
誰よりも深く深く傷つきながら、
誰よりも人間であることを標榜し、
世界の闇と対峙することを選び続けた一組の男女の数奇な愛の物語。
不世出の人間賛歌。
何度読み直したか分からない。
読むたびに、心が打たれる。
僕がどれほどこの本を愛したか、ボロボロになった文庫本が教えてくれる。
和魂要塞のテキストに、
かつてわずかでも共感の念を持った魂は、
かならずこの小説から何かを貰えるはずである。
どうか、御一読を。
この本は、貴方に力を与えてくれる。